美術:多和圭三/ビル・ウォルフ/橋本真之展 小瀬村真美展 造形の個性、映像の感性

 何かと大仕掛けなイベントばやりだが、小粒でも中身の濃い展覧会が探せばあるものだ。橋本真之(1947年生まれ)、多和圭三(52年生まれ)の 両ベテランと、米国から留学中の若手ビル・ウォルフ(71年生まれ)が組んだ彫刻展はまさにそうである。扱う素材も手法も異なる3人だけに、表現の独立性 は厳しく貫かれながらも、何か共振し合っているような心持ちにも誘われるのが、またいい。

 橋本は、銅板をたたき延ばす鍛金と溶接の作業 を、そのまま造形思考と一体化させ、内と外が複雑に入り組んだ特異な形を作り出してきた。ことに知られるのは、形が増殖を繰り返し、見るたびに姿を変えて いくライフワークの超大作だろう。だが、表皮が波状に切断されてめくれた今回の壁掛け作品も、見事にツボにはまっていて、形の不思議な内部構造にぐいぐい 目が引き込まれてしまう。

 うろこ紋を描く銀色の頂面が、ひさし状に少々せり出しただけの多和の四角い鉄塊。それらは、ハンマーを打ち下ろ し続けた行為の産物にほかならない。主観を厳しく排した多和ならではの造作だが、予想だにしない今回の新趣向には正直いって驚いた。1点は鏡同然に研磨さ れた頂面に光を呼び集め、他の1点は箱状にした外枠の全面が、おびただしい溶断痕で銀色に照り映えている。まるで鉄の命の輝きでもあるかのように。

  対して、ウォルフの木彫で際立つのは身ぶりのダイナミズムだろう。大作「AskTheOracle(お告げを聞く)」に顕著だが、くねった茎の上に屋根か 兜(かぶと)のような湾曲した形がかぶさっている。内部の棚に、ぽつんと置かれたネズミの骸骨(がいこつ)。加えて、内と外の連なった開放的な構造が、現 世とも他界ともつかない時空をゆらゆらと立ち上らせていく風情だ。

毎日新聞 2007年5月29日 東京夕刊

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